『イワンのばか』

ロシアのトルストイによって1885年に発表された物語だったんだね。

奇想天外な話が好きだった子供のころ、すごくおもしろいと思った本。

大人になってからあらすじを読み返してみても、物語として秀逸。

イワンはばかだから、お兄さんに財産を全部わけてあげてしまって、悪魔が画策したような諍いが起きなかった、とか。それから、その後、イワンが王女様と結婚して王様になった。


しかし「体を動かさないのは性に合わない」ので、ただ人民の先頭に立って以前と同じく畑仕事をした。イワンの妻は夫を愛していたので、マルタに畑仕事を習って夫を手伝うようになった。イワンの王国の掟は「働いて手に胼胝(たこ)がある者だけ、食べる権利がある。手に胼胝のないものは、そのお余りを食べよ」と言うことだけだった。


現代だと、デスクワークの人の場合は、ペンだこやマウスだこがある者だけ、っていうことになるのかな。

根本的な考え方としては、だれもがなにかしら、世の中のためになることで働かなければならないというところがあって。

ある日、小悪魔を倒された大悪魔は、人間に化けて兄弟たちの所にやってくる。セミョーンは将軍に化けた悪魔に騙されて戦争をして、タラースは商人に化けた悪魔に騙されて財産を巻き上げられて、再び無一文になる。最後に大悪魔はイワンを破滅させるために将軍に化けて軍隊を持つように仕向けるが、イワンの国では人民は皆ばかで、ただ働くだけなので悪魔に騙されない。今度は商人に化けて金貨をばらまくが、イワンの国ではみんな衣食住は満ち足りており、金を見ても誰も欲しがらない。そればかりか、悪魔は金で家を建てることができず、食べ物を買えないので残り物しか食べられず、逆に困窮して行く。

 

なんか現代の世界情勢の歴史とかを少しかじってからこの部分を読むと、まるで現実の世界のことを言っているみたいに見える……。戦争をしかけたり、財産を巻き上げたりって。イワンの国では衣食住が満ち足りていて、悪魔が金貨をばらまいても、金を見てもだれもほしがらないっていう部分も、大人になってから読むとすごくおもしろい。



この話が書かれた19世紀後半は、まだ機械化文明になる途中で、人力が大きな部分を占めていた時代。

当時は、まだ第一次世界大戦前、社会主義国家ができる前で。(何十年も経ってみたら、封建社会の支配者階級の資産を分散したはずが、結局は社会主義国家の国々でも富の集中が起こって、特権階級ができていったわけだけど。日本でも第二次世界大戦前後でそうなっていっているような。日本の場合は多国籍企業へ資産が移っていっているような。)資本主義社会の過酷な労働環境が問題視されていた時期で。(21世紀のブラック企業と似ているね。)


機械の速さと正確さには、いくらまじめにやっても人間ではかなわないところもあるし。

機械を使えば、昔は大人数でやっていたことを少数でできてしまうということもあるし……。

だから、当時の考え方をそのまま現代に当てはめることもできないけれど……。

搾取して消費するだけの側に対する批判もあって、だれもが皆何かしら仕事に携わるべきだという考え方があるんだろうな。


イワンのばか - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%AF%E3%83%B3%E3%81%AE%E3%81%B0%E3%81%8B

 

(2013/7/31作成、2015/9/15改定)