『ロックフェラー対ロスチャイルド』 藤井昇(藤井厳喜氏)著(徳間書店)

ネットを見ていて、気になったので。 この記事を読んで藤井厳喜氏の洞察力がすごいなあって思ったので。 アメリカの大手マスコミはリベラル派で、アメリカの保守派の考え方はアメリカの大手マスコミには入っていないんだなあ。


「ロックフェラー 対 ロスチャイルド」説の研究 http://inri.client.jp/hexagon/floorA6F_he/a6fhe600.html

●この本は、中東が比較的安定していた時期(アラファトとラビンが和解した翌年)に書かれたものなので、今読むと、世界情勢(特に中東情勢)の分析に物足りなさを感じてしまうところがある。しかし、ロックフェラーやロスチャイルドなどの巨大財閥に興味のある人ならば、ぜひ読む価値のある本だと思う。

 

参考までに、この本の一部分を抜粋しておきたい。

『ロックフェラー対ロスチャイルド』 藤井昇著(徳間書店

 

 

アメリカ財界全体を見渡してみると、大雑把にいって、「保守本流派」は製造業に強く、「シオニスト派」はマスコミに強い(ただし、広告主は前者である)。ユダヤ人は伝統的に、金融・流通・知的職業(医師・弁護士・学者・芸術家など)には強かったが、農業や製造業には弱かった。ユダヤ人迫害があったときに、いつでも全財産を持って逃げ出せるような職業に就いたからである。農業や製造業を始めてしまったら、土地に縛りつけられてしまうことになる。

 

アメリカにおいても後発移民であったユダヤ系市民は、製造業の根幹に(研究者として以外は)ほとんど入り込めなかったし、入り込もうともしなかった。しかし、保守本流財界がそれほど重視していなかった、マスメディアの世界には早くから参入し、そこでユダヤ人の強みである語学能力や芸術的才能を、遺憾なく発揮した。映画や音楽も含めたマスコミは、シオニストユダヤたちの圧倒的に強い領域となってしまった。

 

ユダヤ人は、キリスト教徒が主流のヨーロッパでもアメリカでも、宗教的かつ文化的にマイノリティー(少数派)だったから、当然マイノリティーの権利を重んずるリベラルで人権主義的な思想を鼓吹した。そして、各国の保守本流が伝統思想をがっちり守っていくような社会では、異教徒の自分たちが受け入れられないし、迫害されやすいので、自然と、コスモポリタン世界市民)的で、アンチ伝統的なリベラルな思想を支持し、それを流布しようとした。

 

このため、アメリカでは、マスコミで主流となるオピニオンは、著しくユダヤ的=シオニスト的であり、それは同時にリベラルである。またそれは、財界保守本流の保守的オピニオンとは、真っ向から対立することが多い。ニューヨーク・タイムズ』や『ワシントン・ポスト』を読み、ABCテレビやCBSテレビを見ていたのでは、アメリカ財界保守本流の考えは、まったくと言っていいほどわからないのである。

 

1992年のアメリカ大統領選挙においても、『ニューヨーク・タイムズ』や『ワシントン・ポスト』は、民主党クリントンを支持すると公然と社説で明言した。しかし、選挙直前の段階で全米の大企業500社のトップの約7割はブッシュ支持であったし、中小企業経営者の約3分の2もブッシュ支持であった。国益がどこにあるかはっきりとわかっていたのである。

 

振り返ってみれば、アングロ・サクソン質実剛健な気質が製造業を支え、ユダヤ的な気質がマスコミ・文化方面で開花したとも言えようか。保守本流シオニストの間の対立とは、究極的に、このような歴史的環境の隔たりから生じたものと言える。

 

財界保守本流の考えと、シオニストの影響力の強いマスコミの論調には、非常に大きな隔たりがある。この事実が分からないと、アメリカという国を大きく見誤ることになる。