生霊

10代の後半のころに、2回ほど生霊を見たことがある。

2回とも家で、夜寝ている時で、2度とも同じ人だった。

でも恐いと思わなかった。当時、よく話していた、同世代の草食系の性格の優しい男の子だったから。細身だけれど背の高い男の子だったから、気が優しくても本当は力持ちなんだけれどね。(逆に、女の子とつきあったことがあるような積極的なタイプの男の子だったら身の危険を覚えたかもしれない。)


一度目

夜中に自分の部屋の布団で寝ていたら、左腕に指のつんつんっていう圧力を感じて目を覚めた。布団のそばの畳の上で(腕の横の位置)その男の子が穏やかな顔で正座していた。

とりあえず、少しなれなれしいと思ったので、彼を腕で軽くはたこうとしたんだけれど(関西のつっこみのノリ)、手ごたえが無く、空を切ってしまった。彼は、にっこりと笑って、そのまま消えてしまった。

 

二度目

当時は夜中に目が覚めることはあまりなかったのに、なぜか急に夜中に目が覚めた。

自分の部屋の戸の前で、その男の子が立っていて、私を無言で、陰気な顔をして見つめていた。なぜか手には赤い警棒を持っていた。

私は、ああ、また生霊か、と思ってそのまま眠った。(知らない霊だと恐いけれど、よく知っている性格が優しい男の子だと恐くない。)

 

2度とも、翌日、本人に確認してみたけれど、なにも心当たりがなかったらしい…。私の夢を見たわけでもなかったみたいだし。翌日、本人は普通だったし。警棒も持っていないって言っていたし…。本人にストレスがたまっていたわけでも、嫌なことがあったわけでもなかったみたい。 


普段は別に普通で、恋愛感情があるっていう感じでもなく、女の子扱いもしてなかったのに。そのくせに夜、帰り道が遅くなると心配されたりするという。その辺がよくわからなかった。

 

でも、実は、興味があったのかなあ、なんて思う。

普段は、防犯上の理由と、冷え対策のため――喉や腕を冷やして夏風邪をひいたことがある――露出度の低い服装が多かったんだけれど、生霊として彼が出てきた日は2日とも蒸し暑かったので、いつもより露出度が高い服装だったからなのかな。それ以外、考えられない…。

 

でも、「生霊を見たことがある。」とリアル社会で話したら奇妙に思われてしまったことがあるので、今はもうこの話はだれにも話していない…。


目の錯覚だったのじゃないのかとか、疲れからくる脳の障害なのじゃないのかとか言う人もいる。

しかし、当時は無理をしていない時期で、10代で若くて体調もいい時期だった。

幻覚や幻聴が起こる得る薬もあるという話も聞いたことがあるけれど、私の場合は病院にもかかっていなかったし、薬はなにも服用していませんでした。実は、アラフォーの現在でも、今までの人生の中で飲み薬は数回しか使ったことがありません。もともとうちは、子供のころから軽い病気(風邪や頭痛)では薬を使わない方です。母が、薬の副作用を心配する方だったので…。

視力もクラスで一番いい方で、両目とも視力が1.5だった。10代のころの私には、目の錯覚で似た色や形の物が別の物に見えることがあるという感覚自体がわからなかった。(ちなみにアラフォーの現在は、以前よりは少し視力は落ちたけれど、いまだにコンタクトやめがねは使っていない。)